第4話 ページ5
とりあえず外に出たは良いけど、どこへ行くか決めていなかったので、ぼーっとしながら歩き出す。
僕はマンションを出てすぐにある坂を下る。
作文で怒られた小一の頃の帰り道、僕は泣きながらこの長い坂を上ったっけ。何だかこの坂が永遠に続いているような感じがした記憶がある。
その日、家に帰ってからは、泣いている僕を母は抱き締めてくれた。
「何があったの?」と聞かれても僕は泣きじゃくることしか出来ない。
その後しばらくは「大丈夫だよ、お母さんが居るからね」と母は背中を擦ってくれた。
思えば母も、僕が変わるにつれて変わってしまったのかもしれない。
僕は坂を下り終え、どこへ行こうかと改めて考える。その時、また一つ思い出がよみがえってきた。
僕は父の休日に、いつも公園に連れていってもらっていた。
「わぁ、パパすごい!」
父の手から放られた球が、空気をシュッと裂くように速い。
父は高校まで野球をしていたため、球の扱いが上手だ。父はテレビで見る野球選手よりも輝いて見えた。
「Aも投げてごらん」
父にそう言われて投げるが、なかなか父のようには投げられない。それでも諦めず、何度も何度も球を投げた。疲れて体が動かなくなるまで……。
帰り道は父におんぶしてもらった。父の背中は大きくて暖かい。僕は父の背中が大好きだった。
いつからだろう、父と公園に行かなくなったのは。父との距離は離れ、少ししか会話がない。
「あ」
思わず声が出る。僕は気が付くと公園に来ていた。
ぶらぶらと、考え事をしながら歩いていたからだろうか。
__いや、僕は心のどこかで、公園に行くことを決めていたのかもしれない。
「まてまてえぃ」「だーるまさんがこーろんだっ」「いろいろなにいろ」と子供たちの声が聞こえてくる。
僕はふふっと微笑みながら公園の中に入った。
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アリス(プロフ) - 好きぃ…(^q^)というか話の内容が共感しか無い。僕は作り笑いと愛想笑いのプロだからね!(笑) (4月13日 20時) (レス) @page3 id: 36b57db8a9 (このIDを非表示/違反報告)
直♀(プロフ) - お話作るの上手過ぎない!?応援してるね! (4月13日 17時) (レス) @page3 id: cbcc3bbbe5 (このIDを非表示/違反報告)
あるかろいど有機(プロフ) - わぁぁ!どんどん裏人間さんの活動範囲が広がってて超感動してます…1話だけで分かる神小説感!応援してます! (4月6日 20時) (レス) @page2 id: 2f84a9ae4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:裏人間 | 作成日時:2024年4月6日 18時