38話 彼岸 1816年7月3日 ページ1
シャークん視点
✼ ✼ ✼
「シャークん、ちょっと鍛錬付き合ってよ」
「は？もう夜だけど」
「ちょっとだけ。ね？」
そう言って悪戯っぽく笑う三の姫に見られないように嘆息した。
塀を飛び越えて着いた先は、神域とされている湖の畔だった。
満月が近く、また湖からの反射で2つの大きな月が、十分の明るさを保っている。
かんっ、と木刀を弾く乾いた木の音が鳴り響く。
あれから、こっそり鍛錬をしていたせいか、俺もすっかり戦うことに身体が慣れてきていた。
まぁ、違和感は拭えないけど。
多分6人の中なら俺が一番動けるとは思う。
それもいざという時のためだ。
三の姫は男の俺とも平気で打ち合う。
その細い腕のどこにそんな力があるのか。
袴の袖を上手く紐で結び上げた結果、白くて華奢な腕が、不釣り合いな剣を握っていることに違和感を覚える。
って、女子の腕をじろじろ見るものでもないな。やめておこう。
「はぁ、休憩しようか」
「おう、そうだな」
しばらくの打ち合いの後、彼女は近くのむき出しの岩へと腰掛ける。
何となくその横に座り込めば、夏の夜の心地よい風が、先程までの熱を下げてくれるようだった。
三の姫が暑かったのか、結びあげていた髪を解く。
と、風下にいる俺の方へふわりとした甘い香りが香る。
慣れないそれにどきっとしていれば、三の姫は湖を見たまま呟いた。
「あともうちょっとだね、豊穣祭まで」
「やることあんだろ」
「うーん……でも日々のお務めの他はそんなにじゃない？」
彼女たちの大きなスケジュールは大体把握している。
5日に6人で儀式のリハーサル的なことをする。
6日には山奥の聖域の水場で禊をする。
そして7日は日中に舞の奉納、そして夕刻に鎮めの儀式で祝詞をあげる。
……単純に考えたら、生贄にするなら舞の後になるのは確実だろう。
因みに、外からのお客が見るのは昼の一連の祭りだけで。
鎮めの儀式は準備こそ人が出入りするが、本番は舞姫たちと上位の神職数名以外、立入禁止なのだ。
だから正直、そこで何が起こるか分からない。
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しらたま。(プロフ) - ラズさん» コメありがとうございます！もう誰に読まれなくても完成させよう、という意気込みだけでやっているのでそう言ってくださる方がいるのは非常に嬉しいです^^ 時間が出来次第、完成まで頑張りますので気長にお付き合い頂けますと有難いです！今後もよろしくお願いします！ (1月6日 20時) (
レス) id: a02f9236c1 (このIDを非表示/違反報告)
ラズ - 夢より名前変換小説の方が好み+不穏なファンタジーも大好物なので、ここまで一気読みさせて頂きました。一話一話読み進める度、物語に引き込まれていくような描写がとても素敵です。コメント失礼しました、これからも更新楽しみにしております。 (1月6日 19時) (レス) id: e9e65a10f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しらたま。 | 作成日時：2023年12月12日 20時
