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まにあったね
私は。
僕は。
言い訳でしかないけれど。
あなたがほんとうに好きでした。
しあわせになってほしかった。二人で生きられたなら、あわよくば、僕があなたをしあわせにしたかった。それはもうかなわないから、せめて、どうか生きてください
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「にいさん、だいじょうぶ?」
「は、なん、で……?」
なんで、弟がここにいる?なんで、弟が死にかけている?
死ぬのは、俺だったはずなのに。
魔物に腹を貫かれて、ああ呆気ないもんだと、むしろ安心感すら覚えながら目を閉じようとしたのに。
どうして俺じゃなく、弟の腹に穴が空いているんだよ。
魔物は弟の魔法で消し飛んだから、その場に残っているのは無傷の俺と腹に穴を開けた弟だけ。
俺は倒れた弟を抱えて、必死に止血しようと布を押し当てる。もちろん焼け石に水だ。弟の体から抜け出した血が地面や俺の服を赤黒く染めていく。
おそらく、回復魔法じゃもうどうにもならない怪我だと判断したから、身代わりの魔法で俺の怪我を引き受けたのだろう。弟のことだから、何も考えず俺を助けるために動いた。俺を生かしても、良い点なんて何一つないのに。それどころか、俺は弟を捨てて出ていったようなものなのに。
このお人好しめ、と焦りを隠すため悪態をつく。
弟はというと、眠そうな顔で胸元に頭を擦り寄せてくる。
「ごめんなさい、にいさん」
「なんで謝るんだよ……?」
突然の謝罪の言葉に戸惑う。俺の問に答えず、何度も何度も誤り続ける。その声はどんどん小さくなっていく。
「ごめんなさい」
「謝らなくていい、お前は何も悪くない」
だから、やめろ。謝るのは俺の方だから。だから、頼む。
「死なないでくれ……」
「…………ごめん、なさ……」
青藍の瞳は閉ざされた。まだ体温の残る躰を、俺はただ、抱きしめた。
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憧れは理解から最も遠い感情ってやつ。
アーミル自分のことめっちゃ責めてるけど、(作者主観では)なんにも悪くないただのいい人。何から何まで完璧すぎて気持ち悪いだけで。人間味がなくて神様みたいないい人ってだけで。いい人が故に、一番認めて欲しかった相手と相容れなかったかわいそうな人ってだけで。
兄のことは大好き。助けてもらった分だけ兄を助けたい、守りたい、強くなりたい。だが残念、それは兄の地雷だ。
自分で書いといてなんだけどどっちのルートもひどい。
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あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすな@さくらぁさん» またまたコメントありがとうです。兄がぽんこつならもちろん弟だってぽんこつです。間に合ったルートは(弟的には)ハピエンです。間に合わなかったルートも(どっちも壊れちゃったから)ハピエンです。 (4月23日 14時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな@さくらぁ(プロフ) - またしてもコメ失礼します🙇♂️弟視点に命が助かりすぎました。まさかの救済ルートか!?と思ったら案の定そんなものはなく…やっぱり可哀想な男はどう足掻いても可哀想な結末しかないんだというのを再認識できてとても良かったです。 (4月23日 7時) (レス) @page25 id: 6eb52e408b (このIDを非表示/違反報告)
あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすなさん» コメント感謝です〜こいつは実は弟より全然頭良いです。頭が良いせいで頑張っても無駄と気づいてしまいました。それでも他にやりようはあったのに、『逃げ出す』という一番の悪手を選んでしまうぽんこつです。作者もお気に入りなのでもしかしたら続くかもしれない。 (4月8日 23時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな(プロフ) - お話の世界観や最後の後味の悪さに引き込まれ、一気に読んでしまいました。特に2作目のおにいちゃんのお話が大好きです。一生懸命頑張ったけど報われず、最期の瞬間は惨めであっけない男が好きなので、ゼストおにいちゃん最高でした。密かに更新楽しみにしています。 (4月8日 22時) (レス) @page21 id: b675f659fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいすくりぃむとちょこれぃと | 作成日時:2024年4月6日 3時