【WT】まっしろなせかい【短編集】 (ページ10)

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「んーん、寝ようかなって思ったらドアが開く音がしたから心配になったの」
『あ………ごめん、うるさくしちゃったね』
「気にしないでよ〜まだ寝てなかったし………Aこそ、もしかして、眠れないの？」

ぶるーくの言葉に一瞬言葉を詰まらせる。しかし、まるで代わりに正解！と言いたげにレンジが音を鳴らした。

ぶるーくはうーん、となにやら考え込んだと思えば私の手をぎゅ、と握りしめる。そして楽しそうに声を弾ませながら言った。

「ね、ね、A！僕、いい考えがあるよ！」
『な、なに？どうしたの？』

困惑の言葉が聞こえているのかいないのか、私はぱたぱたと引っ張られ、リビングのソファーの上に乗せられる。そして「じっとしててね！」という言葉を置いてぶるーくは自室へと引っ込んでしまった。

なんとなくそこから動かないでねオーラを感じて、私はレンジの中のはちみつミルクを案じながら、とりあえず彼を待ってみることにした。

ぶるーくは数分もしないうちに部屋から出てきた。何故かその手には、見たことの無いもこもこの部屋着と膝掛け、手ぶくろにマフラー………この人は今から外にでも出るつもりか？と思わざるを得ない物々を抱えていた。

ぽかんとしている私を他所に、にこにこ笑顔のぶるーくはソファにはどっかりと座り込む。ついでに持っていたもこもこグッズも跳ねるように揺れた。

「じゃじゃーん！これ、Aに似合うな〜って思って買ってたんだ！」
『え！？』

着てみて！と紺碧色の眼圧が迫る。フリースタイプだから、私がおずおずとパジャマの上から羽織れば、ぶるーくは目をキラキラと輝かせて私をぎゅうっ、と抱きしめた。

「やっぱ可愛い〜！！！思ってた通りなんだけど〜！！」
『く、苦しいよ……でも、ありがとうぶるーく』
「あはは、ぜんぜーん！んで、Aはこれも着けててね！」

そう言ってぶるーくはぽいぽい、と手袋にマフラー、もこもこの靴下を私の膝上に置く。そして立ち上がって作りかけのはちみつミルクを持ってきてくれた。

全身がもこもこに包まれて、なんだか心までもこもこになっていくみたい。

そんな私にマグカップを渡したぶるーくは優しく微笑み、カップを持つ私の手を包み込む。

「辛い時はいつでも僕を頼って。僕、Aのこといつでもあっためてあげるから」

そのまま私の頬に柔らかな感触と、そして、リップ音。
気恥ずかしくなって、私は赤い頬に知らんぷりしてはちみつミルクを飲み込んだ。