【WT】まっしろなせかい【短編集】 (ページ8)

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＊ページ8

あったかいこたつで食べるアイスは夏と違った美味しさがあると思う。

あ、負けました。

戸棚からシャークんのポテチを取りだし、冷凍庫から私の雪見だいふくを出す。冷凍庫の冷気は冷えた部屋と温もりに包まれていたはずの私の手を冷やすには充分な材料で。

あぁ…指先が凍る…早く戻ろう…

勝者シャークんはぬくぬくと気持ちよさそうにこたつで寛いでいる。私は彼を恨めしそうに睨みつけながらテーブルの上に物を置いた。

『ハイドーゾ』
「さんきゅー」

くっそ嬉しそうにしやがって！
そんな顔を見てしまえば嫌味な言葉も喉の奥にすっこんでしまって。

私が冷えた体をこたつの中に滑り込ませようとした、その時。

「A」

ふと名前を呼ばれる。
そちらを見やれば、シャークんがぽんぽん、と自身の足の間の床を叩いていた。座れ、と言われている気がする。

数秒の逡巡。私は少し身を縮めて、でもちょっとだけ偉そうにどっかりと指示された場所に座る。
その瞬間、彼が動き出し、私の体はあっという間に包み込まれた。私からこたつを奪ってすっかり温まった私の大好きな人の腕。

「つめた。マジで外寒いんだ。」
『ひっど、分かってるなら可愛い彼女をそんな戦地に遅らせないでよ。』
「で、俺のポテチは？」
『無視するな！』

いつもの軽口を叩いている間も、私の冷えた体に温度を分け与えるようにぎゅう、と抱き締められる。自分は寒いところに行きたくないくせに、冷たい私を温めるために冷たいものに触るのはいいらしい。……全く、勝手な人だ。

でもなんだかんだ言って、やっぱりこの人の腕の中がいちばん安心することに間違いはなくて。

耳元で聞こえる落ち着いた声も、細そうに見えてしっかりと筋肉のついたその腕も、よく意地悪をいうくせに何だかんだ面倒見がいいところも。………やっぱり、好きだな、っていつも再確認させられる。

『シャークん』
「ん？なに」

私は少し体をずらして下から彼を見上げる。名前を呼ばれ、私を覗き込んだシャークんがじっと私のことを見つめてくれるから、私はその頬へ1つ、不意打ちにキスを落とした。

びっくりして大きく見開かれた翡翠色の瞳からじわじわと顔全体に朱が広がる。あらら、今度はこたつじゃなくて私が貴方に熱を与えてしまったみたい。

『ね、もっといっぱいあっためて？』
「……うるせ」

がぶり
ああ今日も、大好きな鮫に呑み込まれる。