【WT】まっしろなせかい【短編集】 (ページ3)

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ものしり【sm】ページ3

モブ有
会社パロ
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「お、スマイル！お疲れ！」
「おう」
「…でさぁ、Aさん！その時、俺が…」
『へ、へー…』

目の前でウキウキと会話に花を咲かせ…ようとする隣のデスクの鈴木くん。なんとか相槌をうってはいるが、正直それどころではない。

私のAランチはそろそろ湯気が消えてきたというのに、隣にどっかりと腰を下ろした彼のBランチはまだホカホカだ。無言で自身の温かいハンバーグに箸を差し込むこの男から、ずっと無言の圧力が……ｯ！

私もニブチンではない。以前から鈴木くんが私に好意をよせているような言動をみせていることには気づいていた。

だが、残念なことに私は現在進行形でこの…横に座る無愛想な男、スマイルとお付き合いをしている。…周りには黙ってるけどね。

お昼もいつもはスマイルとこっそり隣同士に座って食べているんだけど、スマイルから遅れるとの連絡。お腹すいたな、とお味噌汁を1口飲んだところで鈴木くんが「偶然！」と私の正面に座ったのだ。

けど、鈴木くんは同期だし、無碍に扱うのはさすがにはばかられて。

「ところでさ、Aさんってなにか好きな食べ物とかある？」
『えっ、私？私は、そうだなぁ…』
「ほら、いつもそれ持ってるよね」

それ、と鈴木くんが指さすのは、トレーの横に置かれた喫茶店のコーヒーカップ、が2つ。中からはカフェオレの香りが。

『あ、これは…』
「俺も好きなんだカフェオレ！よく飲むの？」

鈴木くんがそう尋ねてきたその時。
視界の端で、件のコーヒーカップが1つ、姿を消した。

ぱ、とそちらを振り向けば、そこにあるのはやっぱり無愛想な…でも整った横顔があって。

『あ…』
「え、スマイル？それ…Aちゃんのだろ？」
「はぁ」

ため息ひとつ。

「A、それ苦手だろ」
『え、あ、ハイ…』

ちらりと彼の目が指し示すのは恥ずかしながら皿の端に避けられた人参’s。私がたどたどしく頷けば、スマイルはひょい、と自分のお皿に人参を移していく。

唖然とする鈴木くんを横目にスマイルは続けた。

「…モンブランの美味しいお店あったから、帰り寄ろ。」
『う、うん…』
「じゃ、後で待ってる」

そう言って立ち上がるスマイル。そしてそのまま背を向けて返却口へ行ってしまった。

「Aさん…モンブラン好きなんだ…」
『そう、ですね…』

微妙な空気が流れる中、私は大人げなくもマウントをとって消えた彼氏様に苦笑いをこぼした。