【WT】まっしろなせかい【短編集】 (ページ12)

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「初めて会った時からずっと好きでした！付き合ってください！」

そんな言葉が聞こえてきて、私は思わず窓枠の下に隠れるようにしゃがみ込んだ。廊下側の窓はすりガラスだから見えないだろうに、でもなんだか立っていられなくなってしまって。

ああもう、私のバカ！なんでよりにもよって今日忘れ物しちゃうかなぁ！

放課後の教室で告白の現場に遭遇してしまった時ほど気まずい瞬間はないと思う。正直帰りたい。でも忘れたものが忘れたものだから、どうしても回収する必要があるのだ。

実は中に誰がいるのか、さっき通り過ぎる瞬間にドアの小窓から見えてしまったので知っている。

1人は私の所属する文芸部の1年生の女の子。わりと……というか、かなり可愛い。そしてもう1人は、同じクラスのきんときくん、だ。

きんときくんは1年生の時からのクラスメイトで、朗らかで優しくて面倒みのいいお兄さんのような聖人だ。親の転勤で友達0の状態から始まった私の高校生活が、今健やかに過ごせているのは、100%彼のおかげだといえるくらいに。

最初は挨拶を交わす程度の仲だったけど、少しずつ会話の量が増えていき、2年にあがってからは私から声をかけられるほどに成長した。そして、惹かれていった。

まあつまりは忘れ物の回収もあるけれど、想い人であるきんときくんが告白されている現場なんて目撃してしまったせいで逃げられなくなったのだ。

「テニス部の体験入部をした時にきんとき先輩に初めて出会って、先輩の優しさに一目惚れしたんです！」
「…そうなんだ」

うんうん、そうだよね。きんときくんすっごく優しい人だよね。私も彼のそんなところに惹かれたの。

彼が褒められて嬉しい一方、そういえばこれ告白なんだよね、と気分が沈み、小さくため息をつく。
そんな時、女の子の次の言葉に私は心臓が飛び上がった。

「あの、実は友達から聞いて……朝、私が置いたチョコの箱見ながら先輩がすごく嬉しそうだったって…あの、喜んでもらえて、私も嬉しいです！」

チョコの箱。
その単語で思い浮かぶのは朝の光景。

…………あの箱、後輩ちゃんのチョコだったんだ！！！

彼が朝練でいないことは知っていたけれど、結構早めに教室に来て、こっそり彼の机に持ってきたチョコを忍ばせようという私の作戦をあっけなく崩壊させた、ブルーのリボンがかかったブラウンの箱。

どん、と机の中央に置かれたその箱に気圧され結局私は持ってきたチョコを渡せなかったのだ。

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