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朝になり、シャワーを軽く浴びてベッドルームへ戻ればAも起きており、誰かと電話をしていた。
｢しょうくん？…うん…そっか…じゃあまた…うん、あとでね｣
ピ、と機械音をさせて電話を切るAを後ろから抱きしめる。
｢おはよー…今の、誰ぇ？｣
｢おはよチーノ。出張中の仕事相手だよ｣
俺の手を撫でながら言われる嘘に、また騙されるふりをする。
今の名前は昨日、君が寝言で呼んでた名前やん。
Aの携帯の着信履歴、ずっと残り続けるのは、俺の名前じゃないんかもしれんなあ…。
チェックアウトの時間も迫り、2人で忙しなく準備をする。
エレベーターを降り、外へ出ると眩しいくらいの白い朝日が刺さる。
Aは大きな帽子で顔を隠しながら目を細めていた。
指を絡めて手を繋ぎ、他愛もない会話で時間を繋ぐ。
昨日体を触りあった、汚れた手。
2人で汚れてるなら、何も気にならない、よな。
｢んじゃあ、気を付けてな｣
｢チーノこそね。またね｣
駅まで見送り、手を振りAと別れた。
この瞬間がいつも憂鬱で仕方ない。
もっと一緒におりたい、な。
皆にAのことを話すと、そんな女やめろなんて言われる。
俺を大事に思ってるからってのは分かってる。
でも、そんな救いの手なんかいらん。
お互い汚れた手を取り合って、
壊れた、ガラクタみたいな心を見せあって、
Aと2人で落ちて、溶け合いたい。
汚れた手
もしも世界が滅ぶとしたら
Aは誰と過ごすんやろうか。
俺は迷いなくAに会いにいくけど。
アイツのところに走るんやったら
靴は全部隠しておこうか。
俺を蹴ってもええから
裸足で走って足を汚してしまわないように、
捕まえてしまおうか。
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作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
