短編集【d】【npl】 (ページ44)

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この隙間は埋まらない/zm ページ44

俺とAは互いに1番仲がええと自負している。

よく遊ぶし、連絡もむっちゃ取りあって。

旅行も行くし、どっちかの家でゲームだってする。

何も気にせず話し合える、特別な存在だった。

恋心だって無くはないが、この関係のままでも全然良かった。

ある時、たまたまエミさんとAが話しているのを聞いてしまった。

｢では、Aさんは、ゾムさんが好きなんですね｣

｢そうだね、好きだよ｣

その会話を聞いて、俺は舞い上がった。舞い上がってしまった。

そして浮かれた足ですぐさまその場を離れてしまったことを後に後悔することになる。

続きの会話を、聞いておけばよかったと。

エミさんとAの話を聞いてから、Aの行動ひとつひとつが気になるようになってしまった。

俺よりも小さな体躯。

揶揄うと慌てて、照れたように含羞む様子。

花の咲くような笑顔。

どれもこれも、可愛く見える。

自分自身の見ていなかった恋心も、意識するようになる。

…同時に、Aの恋心も意識する。

撫でると嬉しそうに目を細める様子。

他の奴らよりも近く俺と喋る距離。

そして、時々俺を見る、熱っぽい視線。

言われてみれば、そうとしか思えない。

どんどんと、俺の中の感情が、膨れ上がっていくのを感じた。