俺の顔見てればいいんだよ/sn ページ43
ガリガリ
ゴシゴシ
耐えきれない痒みで悶えている私を見て、しんぺいさんが声をかけてくる。
｢どしたん？｣
｢目、痒い…｣
｢あー、花粉症？｣
｢うん｣
今日はしんぺいさんとデートなのに、花粉が酷い。
目が痒い、鼻水が出る、くしゃみする。
メイクは落ちるわティッシュは必須だわ…。
可愛い所なんて見せれやしない。
｢っくしゅ！｣
｢家の中なのに酷いねー｣
｢うん…花粉症じゃないしんぺいさんが羨ましい｣
｢わ、そんな恨みのこもった目はやめて！｣
わたわたと慌てるしんぺいさんにキュンとする。
あれ、コイツ全くもって私より可愛いんじゃないか？
何だろう、負けた気分。
っあー、涙が。
じゃなくて花粉が。
手を目の方へ持っていき、また目を掻こうとすると、しんぺいさんが私の手首を掴む。
｢あんまり掻くと良くないで？｣
｢でも…痒い｣
｢あ、そんな目痒いなら目薬したらどう？｣
｢やだ｣
私の即答に、しんぺいさんは固まる。
だって怖いじゃん。
目薬なんて、したくないし。
｢目薬嫌い｣
｢注せないの？｣
｢自分でやるの怖いし｣
正直に答えればしんぺいさんが薄く笑って、口を開く。
｢やったげよか？｣
｢持ってないよ？｣
｢俺、持ってる｣
｢何でだよ｣
念の為持ってたーと言ってしんぺいさんが鞄から取り出したのはスッキリ爽快！なんて書いてある箱。
｢しみるの嫌｣
｢と言われても…ほら、寝転んで｣
しんぺいさんは自分の膝をポンポンと叩く。
…膝枕と理解し、遠慮なくそこに頭を置く。
｢じゃあ、やるよー｣
しんぺいさんのかけ声で目を出来るだけ開く。
だが、やはり怖くて無意識に目蓋が閉じていく。
｢Aちゃん、閉じちゃアカンよー｣
｢でも怖いって｣
｢目薬意識するからやん｣
どうしたものかと二人で考える。
するとしんぺいさんがあ、と思い付いたような声を出し、言った。
俺の顔見てればいいんだよ
｢あーあ、こんな充血しちゃって可哀想に｣
｢も、もうやるの？｣
｢ほら、目ぇ閉じんと俺の顔見て｣
｢…かっこい、いねっ！？｣
｢はい、成功ー。反対もやるからこっち見てー｣
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作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
