短編集【d】【npl】 (ページ39)

今日:89 hit、昨日:37 hit、合計:3,951 hit

〃ページ39

｢チーノ、もうね、一緒にいない方が、いいの｣

ある日突然そう言って、Aが俺の目の前から立ち去ろうとした。

それを無理やり引き留めようと黒いワンピースを引っ張ってしまう。

ビリッと脆い音がして、破れてしまったワンピース。

瞬間、眉間に皺を寄せながらAは俺のワイシャツの胸ぐらを掴む。

｢私達は、依存しすぎたんだよ｣

ポロポロと、涙を流しながら言うAを抱き締めながら、俺も涙を流した。

同じような真っ黒な服で寄り添っている姿は、舞い上がる煙のようで。

まるで俺ら2人の時間を燃やされてしまっているようだった。

｢最後に、天体観測しよ｣

俺の呟きに、Aは頷いた。

どっちかに嫌なことがあった時、星を見に行っていた河原で、2人並んで座り込む。

お互いに依存しすぎた、自覚はある。

このままではいけないとも、思っている。

ちょうどいい、機会なのかもしれへん、な。

そっと隣に手を伸ばして、Aの手を握りながら、俺らの服とお揃いの黒い空を見上げる。

すると、俺とAを切り裂くように、たくさんの星が流れていた。

人生辛いことだらけだし、Aが近くにいないこの世の中なんて、絶望しかないけど、

俺は、これからA無しで、生きていこう。

だから、絶対にどこかでお前も生きててな。

そう、俺らの腕の傷跡のような流星たちに祈った。

傷跡の観測

いつかまた、どこかで会えるとしたら
笑いあって話せる日がきたら、
一緒に、傷を見せあって
傷跡の深さを測りあおう。
そして傷と傷を擦り合わせて
また、血を分け合おう。