おにさんこちら/tn ページ24
大きな体。
ふたつの角。
屈強そうな見た目。
俺は、赤鬼と言われるものだ。
ある日、ふと山を降りて見てしまったのがいけなかった。
村人に見つかってしまい、怖がられて、怯えられて。
それにショックを受けているうちに、名のある陰陽師だかなんだかを呼ばれて、捕まえられてしまった。
結界を張られたらしく、思うように力も出ず、拘束されて閉じ込められた。
目隠しをされて、何も見えない俺は、何日も村人からの罵倒や投げられる石に耐えた。
｢おにさんこちら｣
捕まって何日経っただろう。
そんな、優しい声が、聞こえてきた。
その声の響いてきた方へ顔を向ける。
｢残念、こっち｣
反対の、ほど近いところからまた声が聞こえる。
｢なんや、殴るか？蹴るか？石でもぶつけるか？｣
｢そんな事しないよお。怖がらないで、さ、私とおしゃべりしようよ｣
声の主はAという。
変わり者と村で言われているらしく、友達がいないから話し相手になってほしい、やって。
そう言うて、裏切るんちゃうかと思っていたが、
毎日、毎日飽きもせずAは俺の元に来た。
｢おにさんこちら｣
その言葉を皮切りに、楽しそうに話しをする。
最初は話半分で雑な返事をしていたが、段々と、Aの来るこの時間が、愛おしいものになっていた。
｢トントンは、優しいね｣
｢はあ？俺が？鬼やぞ｣
｢だって、皆が怖がってたのが悲しくて、吃驚してるうちに捕まっちゃったんでしょ？｣
ちゃんと感情抱えててさ、優しいよ。人間より。
ぽつりと呟いたAの声は、染み渡るように心に響いた。
気付けば、俺の口は勝手に動いていた。
｢助けて…や…｣
暗くて、動けない、この世界から。
周りの目が怖い、この状況から。
その言葉への、返事はなかった。
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作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
