短編集【d】【npl】 (ページ23)

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｢本当は生きるの、とても辛いの｣

葬式が終わって何ヶ月もたった。

俺は、未だにその言葉に縛られている。

形見としてもらった携帯から、AのSNSや、メールのやり取りを見返す。

楽しそうな投稿や日常。

俺と一緒にふざけてる会話や写真。

そんなんばっかりで、
やっぱり悩みは、分からへん。

俺も、誰も分からへんのよな。

Aの心は、名前にしか分からへんねんな。

悔しいな、悲しいな、なんて思うより、
どうにか、Aを分かりたい、って思いが強かった。

生きるのが辛いって、どういう感覚なんやろう。

俺にはないその気持ちを、友人達にも聞いてみた。

胡散臭いとよく言われてる社畜も、街コンに失敗してる中年も、2人とも同じことを言った。

｢そら俺だって、生きるの辛いなって思う時はあるよ｣

俺だけがそれを理解できてなくて、置いてかれてるみたいで、なんだかとても羨ましくなった。

Aを知りたいだけなのに。

生きるのが辛いって、どんな気持ちだったん？なあA。

俺の傍から離れて、遠くに行ってしまったAに心の中で問いかけても、返事は来なかった。

ほんとは生きるのとても辛い

飛び降りる直前、
泣きそうになりながら、口を開く君から、
｢君に、ちょっと疲れちゃった｣
そんな言葉は、聞こえてない。
聞こえてない。