短編集【d】【npl】 (ページ19)

今日:42 hit、昨日:37 hit、合計:3,904 hit

元カノの小説/kn ページ19

彼氏の家の本棚で、本を選んでいると、見覚えのない花柄の小説を見つけた。

本について話す時にも、聞いた事のない本だった。

｢ねえ、シッマ、この小説何ー？｣

｢あー？…ああ、前の彼女の忘れもんやな｣

そんなとこにあったんけ、なんてさらっと言われてしまう。

彼女くらい、いた事あるとは知ってたけど…知りたくなかったな。

過去の恋の残骸を見て、下唇を噛んだ。

私の趣味でもないタイトルやあらすじを見て、目の前の景色が歪み始める。

好きな人の、好きだった人が、好きだった本。

本は好きだけど、

これは、大嫌い。

こんな本、知りたくも、見たくもない。

｢破りたくなる、こんなの｣

ぽつり、呟く声と共に涙が溢れる。

｢…破いてええよ、そんなの｣

顔を上げれば、八重歯を見せながら笑うシッマがいた。

キラキラ光るその笑顔に釣られるように、私も口角を上げた。

びりっ

軽い音を立てて、本のページを破いた。

シッマの元カノが、好きだった小説を

ビリビリと破く。

それを見たシッマもその本を一緒に破く。

2人で笑いながら、小説をビリビリ破いた。