短編集【d】【npl】 (ページ16)

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動かなくなったAを優しく寝かせ、サラリと髪を撫でる。

目を閉じさせて、口元の血を拭えば、綺麗に眠っているだけに見える。

ぽろぽろと、止まらない涙を拭いながら、Aの手を取る。

ほんのりと残る温度を感じながらその手を頬へ寄せた。

小さな爪のついた可愛い手。

柔らかな皮膚で自身の頬を撫で付ける。

じわり、じわりと冷たくなるその手にAの死を実感し、さらに涙が溢れた。

もう、動き出すことは無いんよな。

後悔のようなものが、身体中を駆け巡る。

でも、ずっと、心が苦しかった。

不安で、不安で、毎日気がおかしくなりそうだった。
毎日が、辛かった。

｢俺もすぐそっちいくからなあ、安心して｣

現世でこんな苦しいなら、あの世でずっと一緒にいよう。

俺の心をこんなに傷つけたAは、きっと地獄に行くやろ？

俺も、一緒に地獄行くから。

｢地獄で会えたら、キスしてな｣

体温のないAを抱きしめながら、自分の身体に包丁を突き立てた。

2人から流れ出た血が混ざりあって、まるで、

地獄で会えたらキスしてね

俺以外見ないでほしかった。
俺の事だけ愛してほしかった。

他のやつのいない地獄なら
2人で一緒に幸せになれるよな。

永遠に、2人きりで
愛し合おう。