地獄で会えたらキスしてね/ut※ ページ15
ガタン、ガサゴソ
ひとり、暗い部屋を荒らす。
全部全部、Aが俺を見んのが悪い。
俺を置いて、他のやつに会いに行くのが悪い。
俺の心境を表すように、服やクッションを投げつけて、散らした。
…そろそろ帰ってくる時間だろうか。
そう思った瞬間、玄関の鍵が開けられる音がした。
そのタイミングで、
ガシャン
大きな音を立てて棚の上の物を崩した。
慌てたような足音が近付いてきて、部屋の明かりが点いた。
｢っ鬱！何してんの！？｣
｢…Aがぁ…Aが俺置いていくから…！｣
｢今日は同窓会だって言ってあったでしょ？｣
はあ、とため息をひとつついたAは、荒れた部屋を直しだした。
正直、こういうやり取りはもう何回もしている。
そのせいか、最初は泣き散らす俺に構っていてくれてたAも、今ではまたか…と言った表情で淡々と返事をするようになってしまった。
｢なんで俺を見てくれへんの？｣
｢見てるよ…ほら、鼻水拭いて片付け手伝って｣
ティッシュの箱を渡され、鼻をかむ。
俺の寂しい気持ちは届いてないん？
｢同窓会、どうだったん｣
｢楽しかったよ。久々に会った子がね…｣
目を細めて楽しそうに先程の会を思い出しながら話し始めるA。
同窓会中、俺の事、何回思い出してくれたん？
俺は今日ずっとAのこと思っとったよ。
｢知らん、香水の匂いがする｣
｢…あー、友達隣座ってたからかな。匂い移ったんじゃない？｣
なんでそんな平気そうなん？
なんで俺が悲しんでるのか分かってくれへんの？
頭の中がぐちゃぐちゃで、真っ黒で、苦しくなる。
耐え難い黒い汚い気持ちでめまいがしそうになった瞬間、頭が、ふと、楽になった。
…こんなに辛いなら、俺ら、生きてない方がええんちゃうかな。
ゆっくりと、キッチンに移動して、包丁を手に取った。
｢A｣
名前を呼んで、振り返った瞬間に、その身体へ包丁を突き立てた。
｢一緒に地獄、行こうや｣
｢ぅ…つ…？｣
ごぽり
俺の名前とともに、口から赤黒い血が流れる。
そして俺の胸元へ倒れ込むように、事切れた。
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作者名：ビリヤニ | 作成日時：2024年1月18日 19時
